テクスト_むつぶ
むつぶ
急な雨
私は巡回バスに乗って
車窓から聴こえる雨音を聴いている
バスのエンジン音を
掻き消してくれるのがありがたい
私は訳あって耳せんをしている
それでも充分聴こえる豪雨のしぶき
乗客のかたがたは
少し不安そうだ
回り道をしながら
バスは走る
いつの間にか
雨は弱まって
ボタンを押したころには
西日が差していた
降(お)ります
ふたつステップを降りて
バスを見送った
わたしは
雨粒に光るねこじゃらしと
ハイファイブしながら
上り坂をゆっくりのぼった
おつかい事はまるで徒労に終わったのだったが
感謝でいっぱいの気持ちだった / こころから 梅田恭子